数年前、私は恩師の紹介で私立高校の美術教師をしていたことがある。
教師と言っても名ばかりで、1年間だけの臨時職員の仕事だった。

はじめて教壇に立った時は、緊張した。
大勢の若い男たちの視線にさらされ、私はしばらく身動きができなかった。
生徒たちの視線が集まる場所は、私の“胸”、“お尻”、そして“足”。
だから私の顔なんて見ていないし、私の話も聞いていない。

美術教室は、別棟にあり冷房が入っていなかった。
一クラス30人ほどであったが、すぐに“ムン”とする思春期特有の男の匂いで教室中が埋まった。
窓もないこの部屋では、どうすることもできない。
女の私は、息がつまりそうになった。

最初の課題では、果物のデッサン絵を描いてもらった。
一人ずつの絵を見回っていると、生徒たちの視線が私の上から下まで舐めまわす。
それでも私は毅然とし、ある生徒の絵にアドバイスをした。

「ここはもっと影を強調したらいいと思うわ」

その生徒は「コクリ」と頷き、私の胸の部分ばかり見ている。

(もしかして、私がいるからデッサンに集中できないのかしら・・・)

次の課題は、人物像のデッサン。

「誰かモデルになってみたい人、手をあげてー」

「・・・・・・・・」

「あれ、誰もいないの??」

シーンと教室が静まりかえったところに、一人の声が響いた。

「先生がモデルやってよ」

「えぇ?!」

確かに、大学では交代でモデルになったことはあるし、モデルをすることに対しての抵抗はそれほどなかったが、今は“私が教師”という立場。
それに、モデルになってはみんなが描いている絵を途中で見ることもできない。
ふと、気がつくと、みんなの好奇のまなざしが私に集中し、歓喜のリズムが教室を包んでいた。

「せんせが、モデル!せんせが、モデル!」

(こんな若い男の子たちの目の前で、私がモデル??)
(困ったわ。このままでは収拾がつかない。どうしよう・・・)

「わかったわ」

決心をし、私は白衣を脱いだ。
そして、教室の中央に椅子を置き、“本を読むポーズ”をとってみた。
できるだけ楽なポーズをしたのだった。
前後左右からの生徒たちの視線が感じる。
服を通して、その視線が肌に刺していくのがわかった。

(イヤ!恥ずかしいから、みんな早く描いてよ。)

美術教室は、まるで、私がいる中央にのみ光があたっているような気がした。
シーンと静まりかえった教室には、筆の動きと、時々誰かの咳払いが聞こえるだけだった。

(あぁ・・・まるで、視線に犯されているみたい・・・)

今の光景を想像してみた。
大勢の若い男たちの視線が、カラダのスミからスミまで嘗め回す。
(はぁぁ・・・。やだぁ・・・・恥ずかしい・・・)

そう思うと、ブラの下の乳首が“ツン“になり、下半身も少し濡れているような気がしてきた。

「せんせ、ポーズがよくないよ」

一人の生徒が、そう指摘しながら、私の近くに寄ってきた。
彼はこの教室のリーダー格であることはなんとなくわかっていたが、名前を知らなかった。

「どうすればいいの?」

私がそれを言い終わらないうちに、その生徒は私から本を奪い取り、腕をつかみ背中に回した。

「何をするの?」

「こっちの方がいいんだよ。本なんか読んでちゃつまんない。おっぱい見せてよ。」

何人かの生徒がゲラゲラ笑った。

私は冷静に考えた。
(私は臨時といえども教師。取り乱してはいけないわ。)

彼は続いて私の前に進み、とがったペンで私の乳首をブラウスの上からツンツンとつついた。

「ああ・・・。やめてー」

「せんせ、気持ちいいの? 堅くなってるよ」

「いやャ・・・ハァ・・・ん・・やめてぇ・・・・んぅ・・・」

「気持ちいいなら、気持ちいいですと、正直に言わないと・・・」

(だめぇ、そんな気持ちいいわけないじゃない!?ぁあ、でも乳首、堅くなってるぅ!?・・・やだぁ・・・あぁーん、どうしよう・・・)

首を横に振りながら、懇願の目で彼を見た。

「素直じゃないな~、せんせ。 ほら」

今度はギュと乳首を指でつねった。

「ィタい! あぁ・・・ん・・」

声を出さないように耐えていたつもりだったが、カラダ中に電気が走り、思わず声が漏れてしまった。
私を茶化したあと、彼は遠く離れた場所に立ち、こちらを向いた。
手でフォーカスの枠を作り、この光景が自分の求めるものかをチェックしている。
彼は納得したらしく、私のところへ戻ってきた。

「せんせぇ!? きれいだよ」

そういって、私の髪の毛を整えた。

「・あ・・・あぁ・ありがとうぉ・・・」

目をあわさずに、私は応えた。
そして、彼は自分の席に戻っていった。

(あぁ、ちょっとオチョクラレタだけなのか・・。意外といい子なのかも・・・)