夜の森は、闇の世界が広がる。
月明かりと勘だけを頼りに、私は国道に向けて歩き続けた。
履いてきた草履も片方なくし、足裏にたくさんのささくれができていた。
おまけにあちこち、やぶ蚊に刺されてしまっていたが、もう痛さもかゆさも感じない。
ただ必死で、早足で、国道と思う方向に歩いた。

やっと国道へ出て来れた。
じっと、車が通るのを待つ。
こんな真夜中に車が走ることは、この村では滅多にない。

(観光客やレジャー帰りの家族連れだったら、よいのに・・)
(絶対、私の知らない人でありますように・・・)

(もうあんな地獄には戻りたくない)

逃げてきた方角を見た。
特に騒いでいる様子もなく、いつもと同じように、真っ暗だった。

遠くにライトが見えた。
私は車道に棒立ちになり、その車を止めさせた。

窓が開くとそこには・・・。